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ゆめがたり
『身代わり伯爵』シリーズの二次創作(リヒャルト×ミレーユ)を徒然なるままに、まったりと書いております。
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予約していた 『身代わり伯爵の花嫁修業 Ⅱ嵐を呼ぶ花嫁合宿』 が本日手元に届きました~~~wwww

あらすじを読むなり、噴出し。
思わず、立ったまま読み出しそうになりました・・・が、ええ、これを読むのは、現在書き始めている、あの話を書いてから!!と心に誓っているので、辛抱です・・・・・・辛抱です・・・辛抱だ、私!!

内容的にも、今読んだら、今書いている話が書けなくなる!!
ええ、絶対、自信を持ってそう言えます。

なんか、本末転倒な気もしますが(←気、じゃなくて、そのとおりですね・苦笑)

とにもかくにも、さっさと書いて(←投げやり?!) 
新刊を読むぞーーーーwwww

しっかし、W浮気疑惑勃発!?とは、リヒャルトもミレーユも大変だwww
って、私にとっても、大変です(泣)

新刊読むまでは、他のサイトさんの二次作品も読みにいけないじゃん!!って今気づいて、Wショックを受けている状態です・・・ハハハッ。

さ、続きをサクサクと書いてしまうぞ、私。
で、今週末には、ゆっくり新刊を読めるようにしたい・・・・あくまで、希望、ですが。
現実は、どっちだ!!

拍手[14回]

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いつもと変わらない、落ち着いた声なのに、それはどこか押さえ込んだような響きがあって。
ミレーユは目を見開いた。

「だ、誰に?」

「ヒースに、ですよ」

『ヒース』という名を呼ぶことさえ我慢ならないかのように、その部分だけ、低く唸るような声に聞こえた。

「ひ、ヒース…って、リヒャルトの方が断然かっこいいわよ。それに、とても優しいし、誠実だし。あなたの方が、ずっと素敵よ。だから、ヒースに嫉妬なんかする必要ないと思うの」

「それは、あなたには、俺が彼よりかっこよく見えるってことですよね」

「と、当然じゃない!」

「じゃ、彼とはダンスをしないでください」

「え?」

「彼だけじゃない。今後一切、俺以外の男と踊らないで」

耳元に彼の吐息とともにミレーユの耳元に届くその言葉は、まるで懇願するようなのに、有無を言わせない強さが含まれていて。
同時に、ミレーユを抱きしめるリヒャルトの腕に、力が込められた。

「リヒャ…ッ」

「俺は、あなたをダンスに誘おうとする男がいたら、それだけで嫉妬します」

「そ、そんな奇特な人、いないとおもうけど……」

「いるとかいないとかじゃないんです。あなたには俺を、俺だけを見ていてほしい。俺以外の男を見ないで…」

「そ、それって、以前にも聞いた気が……」

「何度でも言います。俺以外は見ないで。俺だけを見てください」

あの時同様、重ねて言うリヒャルトに、ミレーユはあの時にはなかった胸の高鳴りを覚えた。
そして、一層顔を真っ赤にして、呟くように小さく告げる。

「あ、あのね……」

「……?」

「その、……大丈夫よ」

「ミレーユ…?」

「だって、私……リヒャルトしか見えないときがあるもの」

「え?」

「あなたがそばにいてもいなくても、いつもあなたのことを考えちゃってるし……さっきだって、あなたのためにどうするればダンスが上手くなれるかって、そればっかり考えていて……」

「ミレーユ……」

ミレーユの言葉に、リヒャルトの瞳が見開かれる。

「だって!!下手な私と踊って、リヒャルトが貶められるようなこと嫌だったんだもの!!少しでも上手くなって……キャッ!」

言い終らぬうちに、リヒャルトに強く抱きしめられる。

「!!」

首元にリヒャルトの吐息が熱く降りかかり、ミレーユは今までにないほどリヒャルトを近くに感じて、思わず身体を竦めた。同時に、今までにないほど心臓が脈打つ。

「リヒャルト……」

今にも消え入りそうな小さな声で彼の名を呼ぶ。

「……好きです。どうしようもないほど……」

今まで聞いたことのない、切ないほどの真摯な告白。
ミレーユはギュッと拳を握りしめた。
そして、小さく息を吸うと。

「あ、たしも……す、……きよ……」

震える声をそのままに、ミレーユは精一杯の気持ちをリヒャルトに伝えた。
瞬間、抱きしめていたリヒャルトの腕が離れ、今度はミレーユの両頬を包む。
大きなリヒャルトの手の感触。
長い指が髪に絡む。
どこまでも優しく、甘い鳶色の瞳が自分を見下ろしている。

(え、っと……これって、も、もしかして……)

キスをされるのだろうか?とミレーユの鼓動が跳ねる。
プロポーズされた当初は何度かキスをされたが、このところはミレーユの気持ちを汲んでくれたのか、それとも本来の紳士な彼に戻ったのか。しばしば恥かしい台詞は吐かれるものの、憑き物がおちたかのようにキスを促すようなことはなかった。
だから、安心していたのだ。
キスは、嫌いじゃないと思う。
でも、あの恥かしさは今までミレーユが感じたどれとも違っていて、なんともいえない緊張を強いるし。
心臓がバクバクして、息苦しい上に、思考が停止して、頭が破裂しそうになるのだ。

「り、ヒャルト……あ…あ、あの!!」

今の状態を回避しようと、ミレーユは震える声のまま、言葉を切った。

「そ、ろそろ……や、夜会に、も…どった方が、いいと思うの!!」

「そうですね」

「そ、そうよ!!だから…―」

――手を離して?と続けようとしたとき、ミレーユの唇にリヒャルトの指が触れた。

(えっ?!)

ゆっくりと自分の唇をなぞるリヒャルトの指に、ミレーユは目を剥いた。
見開いた先に見えるリヒャルトは、どこか苦しげに、目を細めている。
が、それもつかの間、あっけないほどすぐにリヒャルトの指が離れていき、一瞬、リヒャルトの口元に苦笑いが浮かんだような気がした。

「ど、どうかしたの?なんか、苦しそう……もしかして、疲れてる?」

「いいえ」

いつもの笑顔でリヒャルトはそう答える。

「ほんと?無理はしないでね。大公のお仕事が大変なのはわかるけど、ちゃんと休まないとダメよ」

「ええ。でも、早く、すべてを片付けたいんです」

「でも、無理して身体を壊したら元も子もないじゃない?」

ミレーユの言葉に、今度こそ、リヒャルトは苦笑をもらして。

「今のままの方が、心身ともに、つらいですから」

と呟いた。
ミレーユはリヒャルトの言葉に、ギュッと拳を握りしめた。

(そうよね。狂信派の人たちは、リヒャルトにとってご両親の敵も同じだもの。彼らを捕まえるまで、心が晴れるはずもない……)

彼の力になりたい、とミレーユは祈るような気持ちでリヒャルトを見上げると。

「そうよね……とりあえず、できることからするわ」

ふわりっと笑って、ミレーユはリヒャルトの手を取った。

「ミレーユ……?」

「ダンスをしましょう!」

「えっ?」

「あたし、ダンスが好きになれそうなの。あなたとなら、もっと好きになれると思うわ!」

「……それは、嬉しいですね」

ほんの一瞬だけ目を瞬かせ、しかしすぐにいつもの笑みを浮かべると、リヒャルトはミレーユの手を握りなおし、促すようにミレーユの腰に手を置き、歩き出した。

「行きましょうか」

「ええ。少しでも彼女に近づけるように頑張るわ!!」

ミレーユの言葉に、リヒャルトは小さく笑う。

「そんなに彼女のダンスが気に入りましたか?」

「もちろんよ!!」

「では、彼女にお願いしますか?」

「え?」

「ダンスの先生ですよ」

「え、でも、もういるし……」

「あなたが習いたい、と思える人の方がいいと思いますよ。彼女も、あなたに興味があるようですし」

「ええ!!ホント?!って、もしかして、あまりに酷くて、呆れてる、とかじゃないわよね……」

ありえそうで怖い、と思いながら、ミレーユはリヒャルトを見上げる。

「違いますよ。どうやら、あなたがあまりに緊張し過ぎていて、ダンスを楽しめないのが、彼女には可哀想に思えたらしく……俺が怒られました」

「え?!」

(今、なんて?)

リヒャルトが怒られた?!
思っても見なかったリヒャルトの言葉に、ミレーユは目を剥いた。

「彼女は、サラの親友だったんです。少しの間ではありますが、俺も彼女にダンスを教わりました」

「ええッ!!そうなの?!」

「ええ。ダンスは楽しむものだと教えてくれたのは、彼女でした。もっとも、あの日まで、ダンスが楽しいものだとは思いませんでしたが」

「あの日……?」

「あなたと初めて踊った時ですよ」

甘すぎるほどの笑みを浮かべ、そう答えるリヒャルトに、ミレーユは思わず視線を落として、顔を背ける。
顔が、燃える様に熱って、とてもリヒャルトに見せられなかった。
あの日のことは、ミレーユもしっかりと覚えている。
今よりはるかにおぼつかない足取りで、何度リヒャルトの足を踏んだか。
できれば、思い出して欲しくない、忘れてしまいたい、ダメっぷりだったのだ。

「そ、そんなこと、忘れてよ……あれはダンスじゃなくて、ある意味、凶器でしょ……」

「そんなことありませんよ。ダンスを楽しく感じたのは、あの日が初めてだったんですから」

「なッ…!」

一瞬、返す言葉を失くす。

(そ、そうだった。リヒャルトが結構意地悪だってことを忘れていたわ)

あの日のことを思い出して、ミレーユはプウッと頬を膨らませると、

「ええ、そうでしょうとも!!リヒャルトにとっては、楽しかったでしょうねッ!!」

と啖呵を切って、歩調を速めた。
引っ張られるようにして彼女の後をついてく形になったリヒャルトは、そんな彼女の後ろ姿を見つめ、クスリと微笑んだ。

(本当に、楽しかったんですよ……)

あなたと出会い、そして重ねてきた時間のひとつひとつが、どれほど愛おしいか。
いつか、あなたに伝えますから。
そのときは――

「――覚悟してくださいね」

ポツリと呟かれたリヒャルトの本音を、ミレーユが知るのは、まだ少し先の話。


Fin

-------------------------------

最後までお読みいただき、といいますか、お付き合いいただき、ありがとうございました~~

最後のオチを考えるのに随分時間を要してしまいましたが、やっと書きあがったので、UPいたしました。

今回も、斜め上思考のミレーユが書けて楽しかったですwww
リヒャルトの苦笑が目に浮かびます(←をい!!)

今後も、純粋だからこそ、斜め上(下)にいってしまうミレーユを書いていこうとおもいますので、よろしければ、また、お付き合いいただければと思います。

今度は、ちょっと切な系なお話の予定です。

で、その話を書き終えたら新刊を読むつもりなので、新刊を読むためにも、サクサクと書こうと思っております。(苦笑)


 

拍手[73回]

 「リヒャルト!今夜のダンスは大船に乗ったつもりで、まかせて頂戴!!」

ミレーユはリヒャルトに駆け寄ると、その手を取って、自信を持って、彼を見上げた。
瞬間、取った手を引かれ、そのままリヒャルトに抱きしめられる。

「ひゃッ!!…り、…リヒャルト?!」

「以前、言ったことを覚えていますか?」

低く、唸るようなリヒャルトの声に、ミレーユは、彼が怒っているらしいことを察した。

(も、もしかして、また心配させちゃった?…とか)

と考えて、あることに気づく。
大公殿下である彼がここにいるという事実。
自分ならともかく、大公殿下が、会場を抜け出して、こんなところにいたら、益々立場が悪くなるんじゃ……
というより……

(また、やっちゃった!!)

考えれば、すぐにわかることだった。
自分が会場を抜け出せば、リヒャルトが率先して探しにくるのは!!
彼が人任せにするはずがなかった。

「ご、ごめんなさい!!す、すぐに戻りましょ!!」

「違います」

「えっ、で、でも……私のせいで、リヒャルトが会場を抜け出してきたんでしょ……?」

「そうですが、俺の言いたいことはそんなことじゃありません」

「へ?って、それはどういう……?」

「俺は、彼には近づかないで、といいましたよね。以前」

低く、一層深くなるリヒャルトの声色に、ミレーユは必死にいつ頃のことだったか思い出そうとした。
そして、随分前、まだリヒャルトが王太子だと知らされず、ヒースがランスロットだということも、そして、彼の目的もわからなかったときに、確かに、リヒャルトはヒースに近づくなと言ったことを思い出した。
いつにない険しい表情に、有無を言わせない強い目をして、ヒースに関わるな、と。
その、思いつめたような真剣な瞳に、ミレーユは気圧されて、ついうなづいた。
今思えば、あの頃から、リヒャルトは自分を巻き込みたくない、と思っていたに違いない。
だからこそ、シアランの神官であるヒースに、近づけさせたくなったのだろう。
もっとも、ミレーユは、誰に巻き込まされたわけでなく、自分で巻き込まれにいったのだから、リヒャルトでなくても、怒って当たり前だろう、と今更ながら、思った。
リヒャルトやフレッド、そして、ジャック達第五師団の皆がいなければ、自分は今此処にいなかったのかもしれなかった。
リヒャルトが、助けに来てくれなければ……今頃は、オズワルドの妻になっていたのだろうか……
そんな考えがふと浮かんで、ミレーユはブルッと身を震わせた。
そして、ミレーユの震えに気づいたのか、ふいに自分を抱きしめていたリヒャルトの腕が離れ、自分をのぞきこむように、視線が重なった。

「ミレーユ…?」

「……ちょっと、思い出していて…私って、本当に考えなしだったなぁってね」

あなたのために、と思っていたのに、結局迷惑をかけて、状況を悪化させただけ、なんて。
ほんと、考えなしだった。
だからこそ。

(今度こそは頑張らないと!!)

「ミレーユ」

「あ、ごめんなさい。えっと…ヒースのことよね。思い出したわ。でも、今は状況が違うんだし……そりゃ、ランスロットの件は、罰せられて当然だけれど…でもね、ランスロットって、庶民には、結構人気があるみたいだし……あれでも神官だから、その人を貶めるようなことはしないと思うのよ。も、もちろん、そんなことしたら、私が黙っていないし。私が改めさせるから……」

「そういうことでじゃありませんよ」

リヒャルトは小さく笑って、双眸を細めた。
そして、小さく溜息を吐く。

「もしかして、その……気分を、害してしまいましたか?」

「え?気分?」

「ええ、だから、彼と一緒に……」

リヒャルトの細められた鳶色の瞳が僅かに翳った。

「え、っと……大丈夫よ?」

全然元気だけど?と僅かに首を傾げながら、ミレーユは答えた。

「い、いえ、身体のことではなくて……」

「身体のことじゃない…って?」

ミレーユはリヒャルトを見上げる。
自分を見下ろすリヒャルトは少し困っているような、そんな顔をしている。
何か困らせるようなことをしただろうか?とふいに考えて、ハッとする。

「と、とにかく!!どこも悪くないから、早く会場に戻りましょ!!大公殿下がこんなところにいつまでもいたら、マズイでしょ?!」

大公殿下か会場を抜け出して、いつまでもこんなところに居ては、それこそ、立場が危うくなる。
ミレーユは慌てて彼の手を取って、引っ張った。

「ほら、早く!!私は大丈夫だから、行きましょ!!」

「ミレーユ、待ってください。一つ、ちゃんと確認しときたいんです」

リヒャルトの腕を引っ張っていたミレーユの手に、彼の手が重なり、逆に引っ張られる。
先ほどより、リヒャルトの顔が近くにあって、ミレーユは反射的に、一歩下がろうとした。
それを、リヒャルトはミレーユの腰に腕を回すことで阻止すると、一層ミレーユの顔を覗き込むように、上体をたおした。

「リ、ヒャルト……?」

「彼と、ここで何をしていたか、ちゃんと教えてください」

そう聞いてくるリヒャルトはあの時と同じように、思いつめたような瞳をしている。そして、聞き出すまで離さない、という無言の威圧感を感じて、
ミレーユはわけもわからず、

「えっと、ここで、ダンスの練習をしていたのよ。ヒースって貴族じゃないのに踊れるっていうから。手伝ってもらってたの。ほら、一人だと感覚がつかめないというか……」

転びそうになったことは言わない方がいいだろう、と言葉を濁す。

「で、ちょっとしたコツを教わったから、少しはマシになっているはず……」

「それは、嫉妬からですか?」

「へっ?」

「嫉妬したから、彼と練習なんかしたんですか?」

「ちょ、し、嫉妬って?!誰に?!」

「あなたが会場から出て行ったときに俺が踊っていた令嬢にです。それとも、俺に腹を立てたとか……」

「ええッ!!」

あの素敵な女性に嫉妬?って私がッ!!
で、どうしてリヒャルトに私が腹を立てなきゃいけないの?!
ミレーユは驚いて、リヒャルトを凝視した。
彼の言葉の意味が理解できない。

「彼女に嫉妬って、どうしてそうなるの?もしかして、私の羨望の眼差しが、嫉妬に見えたとか…だったらショックだわ。できることなら、師匠になってほしいぐらいなのに…」

自分の熱い視線が、そんな風に見えていたのか、と思うと、ミレーユはシュンとなった。

「師匠、ですか?」

「そうよ!!あの足捌き!そしてアリス様に負けず劣らずの色気と胸……いったいどうしたらあんな風になれるのか、是非ご教示頂きたかったのにって、リヒャルト?」

リヒャルトが大きく溜息をついて、項垂れた。

「……そうですか。俺は、あなたに『彼女と踊るな』と言われたら『もう二度と踊らない』と言うつもりだったのですが……」

「ええぇーーー!!そんなもったいない!!本当に素敵なんだから!!まるで物語に出てくるお姫様と王子様みたいで……私だけじゃなく、会場にいた令嬢は、皆そう思ったはずよ!!もう踊らないなんて……そんなこと…って、もしかして、リヒャルトは彼女のことが嫌いなの?そんな風に見えなかったけど……」

踊っているから確かなことは言えないが、彼女を見るリヒャルトの瞳に、そんな気持ちは映ってなかったと思う。それとも、上手く隠していたのだろうか?とミレーユが心配そうに顔をしかめると。

「……信用、されていると思うべきか、それとも……」

ボソリとリヒャルトがそう呟いて、鳶色の瞳を細め、少し考えるように視線を落とした。
ミレーユは益々心配になって、自分の手に重なったままのリヒャルトの手に、もう片方の手を重ね。

「信用してるに決まっているでしょ!!私は、いつでもリヒャルトを信頼してるわ。私が安心して背中を預けられるのは、リヒャルトだけよ!!」

ミレーユが、まるで宣誓するようにそう告げると、リヒャルトが小さく笑った。

「それは、嬉しがるべきなんでしょうね」

ミレーユを見るリヒャルトの瞳が、いつもの優しい色を称える。
それに安心して、「もちろんよ!!」とミレーユは強く頷いた。

「わかりました、背中を預けていただけるのなら…」

そう言ってリヒャルトが微笑むと、刹那、繋がったままの手を軸に、クルリと回転をさせられ、ミレーユが驚く間もなく、次の瞬間には、背中からリヒャルトに抱きしめられてしまっていた。

「ひゃッ!!」

背中に感じるリヒャルトの大きな胸。
自分を軽々抱きしめてしまえるがっしりした腕。
そのぬくもりに、ミレーユの心臓は早鐘を打ち始め、比例して、顔に熱が篭る。

「リ、リヒャルト……あ、あのね……そ、その、この体勢は……」

「ミレーユ……」

呼ばれた瞬間、耳元にリヒャルトの吐息がフッとかかった。
ミレーユはビクッと身を竦めると同時に、反射的に上体を少しでも遠ざけようと前に屈もうとした。
が、すぐに胸元に回されたリヒャルトの腕に阻まれ、彼の吐息を感じながら、次の言葉を聞くことになる。

「俺は、嫉妬しました」

「えっ……?」


To be continued

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またも長くなってしまいました~(泣)
こんなに長くなる予定なかったのに、どこで間違ったんだろう・・・?

ということで、まだ少しだけ続きます。
のびっのびっのお話ばかりでほんとすみません。

後編は今週中にUPいたします。

PS:このようなところで恐縮ではございますが、拍手を送ってくださった方、ありがとうございます!!
  今日、拍手がされてるのに気づいて、もうビックリでした!!
  本当に、嬉しいですwww


拍手[35回]

ドレスの裾がふわりっと風に舞い、まるで流れるように、会場を滑っていく、リヒャルトと、、淡い銀色の髪をした、それはもうミレーユなんて歯が立たない、生まれも育ちもどこから見ても令嬢である、素敵な女性の姿だった。
ミレーユは、そんな二人のダンスを見ながら、夢見心地と言っても過言ではないほど、うっとりと目を細めた。二人は、物語にでてくる、素敵な王子様とお姫様のようで。
女の子なら、誰でも憧れる、それは夢の中のワンシーンのようだった。

(やっぱり、ステキだわ……)

ミレーユはふぅ~と感嘆の溜息をもらす。

自分のようにドレスに『着られている』感があるのに対して、彼女は、髪の色と同じ銀糸で刺繍が施された青いドレスを余裕で着こなしている。
大きく開いた胸元も、自分のように余るどころか張っていて、とっても柔らかそうだ。
そしてなにより、その流れるような鮮やか足捌きは、もう素敵としか言いようがない。

(本当に、なんて、綺麗なのかしら……)

くるりっと廻る瞬間、ふわっと宙に舞う、銀糸の長い髪。
シアランでは、女性は長い髪が当たり前で、逆に短い髪は禁忌でもあるから当然だけれど。
彼女の髪は、まるで月の光に輝く雫がおちていくように、キラキラと輝いていて。
言葉で言い表せないほど、美しかった。
そして、そんな彼女をリードするリヒャルトのかっこよさといったら、本当に王子様のそれで。
シアランの貴色である蒼の礼服は、リヒャルトの綺麗な茶色の髪を一層引き立てていて。
スラリと伸びた背は、いつもよりずっと逞しく見えた。

(あんなにかっこいいのに、リヒャルトって、ほんと奥ゆかしいんだわ)

『俺より、フレッドの方がよほどモテますよ。ミレーユも知っているでしょ?』という、リヒャルトだが、フレッドがモテるのは、かっこいいから、というより、あの話術に騙されているとか、あの奇想天外な振る舞いに、踊らされているとか、そんな感じだ。
フレッドにはまだ、男性としてのかっこよさは備わっていないような気がする。というのが、妹であるミレーユの見解だった。

(だいたい、私に代わって女の子を演じられる男なのよ。男としての魅力なんて、まだまだあいつにあるはずないわ!!)

とミレーユは現在アルテマリスに一時帰国している兄を思い出し、そして、ふと会場を見渡した。
ミレーユに負けず劣らず、二人の姿に、夢見る乙女たちが、ポォーと魅入っている。
頭の中では、乙女思考が爆走中だろう。

(私でもそうなんだから、彼女たちはもっとなんだろうなぁ~)

再び、円を描くように踊る二人の姿に視線を移して、ミレーユはまたも感嘆の声をあげそうになって、ハッとあることに気づく。

(私と踊っているときのリヒャルトはどう見えるんだろう……?)

自分の実力のほどは痛いほどわかっているが、リヒャルトの評価が、自分のために貶められるなんてことになっていたら、それこそ、申し訳なさ過ぎて、もう彼とは踊れなくなりそうだ。

(よしッ!!)

ミレーユは手にしたグラスの中の蜜ぶどう酒を、一気に飲み干すと、まだ途切れそうにない音楽を聞きながら、そっと会場を後にした。


------------------------------

「ここなら良さそうね。月明かりで、十分明るし」

ミレーユは会場から少し離れた、中庭の中央まで進むと、両腕を上げ、右足、左足と、声を出しながら、ステップの練習を始めた。

「で、ここでターン……ッ!!」

というところで、足が絡まって、そのまま上体が崩れ、花壇へと倒れこむ。

(マズイッ!)

反射的に次にくる衝撃を意識して、ミレーユは身を固め、ギュッと目を瞑った。
と同時に、なにかに支えられる。

「あっぶねーだろ!!」

頭上から聞こえた、聞いたことのある声に、ミレーユはハッとなって顔をあげる。

「ひ、…ヒース……?」

自分の腰に回されたヒースの腕に助けられたことを瞬時に悟って、ミレーユは安堵のため息をついた。

「あ、ありがとう…た、助かったわ……あやうく、ドレスをめちゃくちゃにするところだった……」

「……ドレスの心配かよ、おまえは……」

心配半分、呆れ半分、といった様子で、ヒースはミレーユを抱え起こす。

「だって、このドレス、リヒャルトが用意してくれたのよ。汚したりしたら、悪いじゃない。私弁償なんてとても出来ないし……」

ミレーユの着ている淡い朱色がかかったドレスは、今夜の為にリヒャルトが用意してくれたものだった。
柔らかい肌触りの生地に、仰々しいほどの刺繍やレースなど使われていない、自分にはもったいないくらいの上品なデザイン。
そして、とてつもなく、軽い。
ドレスの相場がどれほどか知らないし、怖くて知りたくもないけれど、このドレスがいままで自分が着た中でも、上等なものであることは、間違いない。
ハッキリ言って、そんなドレスになにかあったら、謝っても、謝りきれない自信がある。

「あのなぁ~普通、ドレスになにかあるより、おまえに何かあった方が痛手だと思うぞ」

ヒース
の言葉に、ミレーユは首を傾げた。

「私は頑丈に出来てるから、大丈夫よ。でもそうね。怪我なんてしたら、また迷惑をかけちゃうわよね」

微妙にズレてるミレーユの言葉に、ヒースは小さく苦笑して、

「で、こんなところでお前はなにやってんだよ。まだ夜会の真っ最中だろ?」

「ダンスの練習をしてたのよ」

「ダンスって、一人でか?」

「どうせ、私の相手になってくれるような人なんていないわよ!」

「逆切れかよ。だいたい、ダンスの相手なら、大公様がいるだろうが……」

「リヒャルトと練習なんて、本末転倒だわ。私はリヒャルトに恥をかかせたくないのよ。私のために、リヒャルトが貶められるなんて、我慢ならない」

ミレーユは力強く言って、ヒースから離れると、さっと腕を上げて、ダンスの練習を再開しようとした。

「わかったわかった。俺が練習相手になってやるよ」

「え、あなたにダンスなんて踊れるの?貴族でもないのに!?」

「見てりゃ覚えられるっての。だいたい、ダンスってのは男のリードで良し悪しが決まるもんなんだよ」


と言いながら、ミレーユの手を、ヒースが取った。
くるりっと、さっきはできなかったターンが、まるで流れるように決まる。

「う、嘘!!決まった!!」

あっけないほどあっさりとターンが決まって、次のステップに足が自然移った。

「あとは、考えながら足を出さないことだな」

「考えながらって?まだステップの順番を覚えてないんだもの、仕方ないでしょ」

「順番なんてものを考えるから、トチるんだよ。もともと頭より先に行動のお前が、考えながら動いたら、ワンテンポ遅れて当然だろ」

「なッ!!人を単細胞みたいに!!」

ヒースとの言葉の応酬のせいで、頭の中で追っていたステップの順番がいつのまにか消えていた。
それが功のなしたのか、ヒースの足を踏みそうになったり、そのせいで次のステップが覚束なくて、焦ることもない。
自然と、足が、次のステップを刻み、体がヒースについていく。

「す、すごい。まるで魔法みたい!」

ミレーユは感動して、声を上げた。トチらないばかりか、ターンをするたびに流れる空気が心地よくて。とても清々しい気持ちになれた。
自然、口元が綻び。
今まで、ダンスを敬遠していた自分を恥じた。

(ダンスがこんなに楽しいものだったなんて……)

決められたステップを何度も繰り返す貴族の嗜みである、ダンス。
もともと貴族社会に良い印象を持っていなかったミレーユは、ダンスも、大公妃として必要だから覚えなきゃいけない、という固定観念に囚われ過ぎていて、楽しもうと思って取り組んでいなかった。

「ヒース、ありがとう。私、今まで、ダンスって大公妃になるための必須項目とか、そんなことばかり考えてて、楽しんでなかったの。でも、それじゃいつまでたっても上達しないわよね。やるからには、何事も楽しまなきゃ、もったいないしね」

「はは、お前らしいわ。って、どうやら時間切れみたいだな。お迎えが来たぜ」

ヒースの視線が、ミレーユの背後に向けられる。
ミレーユはその視線を追って、振り向くと、こちらを見つめているらしいリヒャルトの姿があった。

「リヒャルト…」

「ほら、頑張りな」

ヒースに背を押され、ミレーユは大きく頷いた。

「うん、頑張る!!」

「ああ、ほどほどにな」

とヒースはヒラヒラと手を振って、そのままリヒャルトの脇を通って、出て行った。
そのとき、リヒャルトにだけに聞こえる声で、ヒースが何事が告げたことに、ミレーユは気づかなかった。
まして、ヒースの言葉に、リヒャルトの顔が強張ったことなど、知る由もない。


 

拍手[33回]

 「……」

すっぽりとリヒャルトの胸の中に抱き寄せられ、刹那、全身に熱が拡がり、所作も思考も固まった。心臓が、張り裂けそうなほどドクドクと脈打って、息が詰まる。

「ミレーユ?」

リヒャルトの声がすごく近くに聞こえて、ビクッと身を震わせた。

「そんなに、怖がらないでください」

優しい
声リヒャルトの声が、どこか悲しげに聞こえて。
ミレーユは、慌てて首を振った。

「…こ、わが…、な…て…」

怖がってなんていない、と言うつもりなのに、言葉が、声が上手く出てこない。
そんな自分に、苛立ちをおぼえて、リヒャルトの胸に置いたままの手をギュッと握りしめる。

「すみません、強引過ぎましたね」

言いながら、ミレーユを抱く、リヒャルトの腕が離れ、脚が下ろされた。
いつでも、リヒャルトの膝の上から離れられる状態になって、

「ち、う……」

まだ震えてる自分の声に、苛立ち。涙が溢れてくる。

「ちがう、の……こ、怖がって、な…て、いな…わ」

「泣いているのに?」

リヒャルトの顔が切なげに歪む。その鳶色の瞳に浮かぶのは、後悔の色…?
そう思った瞬間、ミレーユは、自分からリヒャルトに抱きついた。

「違うって、言ってるでしょ!!」

ギュッと抱きしめて、叫んだ。

「ただ、驚いただけよ!!前から言ってるけど、リヒャルトの言葉とか行動とかって、すっごい、天然なの!!」

すっごい、を強調して、ミレーユは抱きしめる腕に、一層力を込めた。

「あなたには普通のことかもしれないけど、私はいつも死にそうになるの!!」

彼の一挙一動が、どんなに自分の心臓に負担をかけるかなんて、リヒャルトは考えたこともないのだろう。
こっちは、彼氏いない暦17年なのだ。
上級編まですでにマスターしているらしいリヒャルトにとっては、なんでもないことかもしれないけど。
初級編すら修めていない自分には、ハードルが高すぎるのだ。

「心臓は張り裂けそうなぐらいドクドクいって、全身の血が沸騰するみたいになって、苦しくなって、挙句のはてに、声も上手く出せなくなって……って、なに笑っているのよ!!」

ミレーユがどれほど大変であるかを必死に語っているにもかかわらず、見上げたリヒャルトの口元には笑みが浮かんでいて、鳶色の瞳も先ほどとは違って、穏やかな色を称えていた。
それに安堵しながらも、こっちの必死の訴えを笑われて、リヒャルトの背に回した手を解いて、そのまま彼の胸をわしづかむと、

「私が困っているのに、笑うってどうなのよ!!」と噛み付いた。

「すみません、嬉しくて、つい」

「うれしい…?意味がわからないわよ!」

あいかわらず、彼の言葉はわからない。

「男として、意識されているって、わかるから」

「え?リヒャルトはどう見ても男じゃない。あなたを見て女だって言う人がいるの?」

それは、その人の目がおかしいとしか思えないわ、と呟くミレーユの手を、リヒャルトはそっと握りしめ、その手を口もとにもっていく。

(ま、またッ!?)

ミレーユは、もう反射的といっても過言でないほど、ビクッと身を震わせた。

「だ、だからッ!!」

リヒャルトに触れられている場所から、熱が全身に拡がっていくような。そしてそれに呼応するように、心臓の動きが活発になっていく。

「リ、リヒャルト……」

「怖がらないで」

リヒャルトの声が、優しく響く。
じれったいほどゆっくりと、ミレーユの手に、リヒャルトの唇が落ちた。
触れるか触れないかの、まるで、そよ風のような、口付け。

「あなたが、好きなんです」

そう告げるリヒャルトの表情は、いつもの爽やかさな笑顔でなかった。それどころか、どこか切なげで、苦しそうだった。
リヒャルトのその表情に、動揺と緊張で早鐘を打っていたミレーユの心臓は、嘘みたいに止むと、今度は、逆に締め付けられるように、キュッと小さな音を立てた。

「―――なんで、そんな顔するの?」

「あなたが、好きで、好きで、どうしようもないからです」

リヒャルトの自分への気持ちは、彼にこんな苦しげな表情をさせるものだったのだろうか…
ミレーユは愕然とした。
彼を幸せにしたい。
彼が失くしてしまった『家族』になってあげたい。
彼が元気で、いつでも笑っていられるように。

(でも…)

こんな顔をさせてしまう自分は、ぜんぜんそれに叶っていないのではないか?と思えた。

「頑張ってはいるけど、やっぱり、結果が伴わない私には、無理なのね……」

「――ミレーユ?」

「努力だけじゃダメだってわかってはいるの。胸は大きくならないし、魅力だってつかないし、歴史も、経済も、覚えた端から忘れていって、何度も同じところから予習復習で。自分で自分の馬鹿さ加減に泣けてくるもの。だから、明日、あなたがどんな女性を選ぼうと、私、絶対仲良くなるわ。リディエンヌ様やマージョリー様や…!」

――アリス様のように、と続けようとしたミレーユの口が、刹那、リヒャルトの手で塞がれた。

(リヒャルト…?)

自分を見つめるリヒャルトの顔に、険しいものが宿る。

「俺は、あなたが好きなんですよ。他の女性を選ぶって、どういうことですか?というより、さっきも変なことを言っていましたね。明日は俺に近づかないってどういうことですか?」

いつにないリヒャルトの強い口調に、ミレーユは目を瞠った。
自分はなにかリヒャルトが怒るようなことを言ってしまったらしい、と思い当たる。
努力してもどうにもならない自分に、ほとほと愛想が尽きたのだろうか?
それとも、あんなに頑張るってといっておいて、未だ実にならない自分に、嫌気がさしたのだろうか。
どちらもあっている気がして、ミレーユは瞳を伏せた。
と同時に、涙があふれそうになって、慌てて彼の腕を振り払い、膝上から立ち上がると、そのままその場から逃げようとしたミレーユは踵を返した。が、それよりも早くリヒャルトの手がミレーユの手首を掴み、引き止める。

「は、離して……」

「無理です」

「…無理…って……ッ!」

いつもと違う強引な様子のリヒャルトに、ミレーユは戸惑い、目を見張る。
その一瞬に、リヒャルトの腕が伸びてきて、ミレーユを後ろから抱きしめた。

(なッ!!)

気持ち的
には飛び上がるほど、ミレーユは驚いて、息をのんだ。

「俺は、できるなら、ずっと、あなたといたいんです。片時も離れずに。あなただけを見ていたい」

そして、ミレーユの動揺を、一層煽るかのように、思ってもみないリヒャルトの言葉が続く。

「……そ、そんなこと、で、できる、はず、ないじゃない……」

考えることを放棄したまま、ミレーユは感情のまま答えた。

「ええ、そうですね」

「そ、そうでしょ!!だからッ…」

「だから、あなたと一緒にいられるときは、あなたといたいんです」

「わ、私だって、……いたいわ」

本当は、リヒャルトと一緒にいられる時間が、一番好きだった。
どんなに彼の天然な言動に、戸惑って、どっと疲れを感じても。
彼の行動に、心臓が壊れそうになって、死にそうになっても。
それでも、リヒャルトと一緒にいたい、と思っている。
ミレーユは、自分を抱きしめるリヒャルトの腕に、そっと自分の手を重ねた。
この腕に、自分は何度助けられただろう、と思うと切なくなった。

「ミレーユ……」

優しいリヒャルトの声に、一層切なくなって、ミレーユは重ねた手に僅かに力を込めた。
助けたいのに、助けられてばかりの自分。
頑張ってはいても、未だ何一つ結果が出せない自分。
それでは、ダメなのだ。
今の自分は、リヒャルトと一緒にいられない。

「でも、まだ、駄目なの」

「そんなこと…」

リヒャルトの言葉を遮るように、ミレーユは首を振った。

「ううん、今の私じゃ、あなたと一緒にいられないわ。なにもかも、足りなすぎるもの。私が一番嫌なことはね。あなたに迷惑をかけることなの。もう、あんな風に、あなたに迷惑をかけたくないのよ」

シアランでの一連の出来事は、まだ記憶に新しい。
彼を助けるつもりだったのに、助けられたのは自分の方で。
なにより、自分のせいで、彼を危険な目にあわせてしまった。
自分がいなければ、もっと効率的にオズワルドを倒せていたかもしれなかったのに。
ミレーユは、あの時ほど、自分の行動を恨んだことはない。

自分の浅はかさに、吐き気さえした。

「あなたを幸せにしたいのよ。あなたには幸せになって欲しいの」

彼が失ってしまったもの、それを取り戻す力は自分にはないけれど、これから彼が手にするなにもかもを、守りたいと思う。
もう、決して失わせないように。

「俺は、幸せですよ」

言いながら、リヒャルトの腕がミレーユから離れ、刹那、両肩を掴まれたかと思うと、くるりと半回転させられ、リヒャルトの胸の中に抱きしめられた。

「リ、リヒャ……ッ」

「あなたには言ってなかったかもしれませんが、俺は、あなた以外の妻を娶るつもりはありません」

「えっ?!」

「俺の愛は、すべてあなたに捧げます」

ミレーユの耳元に、ささやくように、そして誓うような、リヒャルトの声が響く。

「そ、…な、こと……無理…だ…わ……」

あなたは大公殿下なのだから、と言外にミレーユは呟いた。

「無理じゃありませんよ。というより、俺があなた以外の女性を欲しくないんです」

リヒャルトはそう告げると、僅かに抱きしめていた腕を解き、ミレーユの顎先を捉え、そっと、上向かせる。

「覚悟してくださいね」

いつもの、爽やかな笑顔なのに、その瞳はどこか真摯なもので。
ミレーユは、言葉をなくして、彼を見上げた。

「結婚したら、離してあげられないと思うので……」

そう言って苦笑とも取れる笑みを浮かべたリヒャルトは、その情熱的な言葉とは裏腹に、ミレーユの顎先に触れていた指をそっと離して、一歩下がった。

「ゆっくり休んでください。明日の夜、ともう今日ですね」

リヒャルトは12時を大幅に回った置時計をチラッと見て言うと、今またミレーユを見つめ。

「夜会には、誰がなんと言おうと、あなたの隣りには、俺が行きます」

だから、逃げなんでくださいね、とリヒャルトは鳶色の瞳を細めた。
その表情が、ひどく色っぽく見えて、ミレーユは思わず力強く頷いてしまった。

「わ、わかったわ…」

ドキドキとまた心臓が高鳴って、上手く呼吸ができない。
僅かに感じる眩暈は、睡魔の所為では決してないだろう。

「では、ちゃんと休んでください。他の男に寝顔など見られたら、嫉妬でその男を殺してしまうかもしれませんからね」

最後にそう言って部屋を出て行くリヒャルトに、ミレーユは反射的に「おやすみなさい」と告げる。
そして、自室の扉が完全に閉められた瞬間、リヒャルトの言葉の意味に思い当たり、ボォッと全身を真っ赤に染めた。

「そ、そういう、意味、だったのね……」

思いっきり見当違いのことを言ってしまっていた自分に、一層恥かしさが増して、顔が熱る。



その夜。

リヒャルトは宣言通り、父と一緒に会場に訪れたミレーユに手を差し出し、そのままエスコートをしながら、会場の中央へ進むと、夜会の挨拶とともに、ミレーユを「婚約者」であることを紹介した。
もちろん正式な婚約は喪が明けてからであることを含めたけれど。

ミレーユが溢れる涙を止めることができず、一度会場を辞したのを、笑う声はなく、どころか、彼女の涙に胸を打たれた者達がいたことを、リヒャルトは気づかなかった。

ただ一人、フレッドを除いて。

「あ~あ、敵を増やしてどうするのさ」

と肩を竦めた。


Fin


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終わりました~ 最後までお読みいただいた方(いるのか?!)ありがとうございました。

長かった・・・っていうか、ほんとうはショートストーリーを書くつもりだったのに。
どこをどう間違えたのか、こんなに長くなってしまいました(苦笑)

ああ、エドゥアルトとの約束がなければ、このままキスシーンぐらい書けたのに!!
とラブラブを目指している私としては、ちょっと物足りなさが・・・(←をいッ!!)

ともあれ、これではじめてのお話は書き終わったので、次を書きます。

現在ストックしてるお話が3つあるので、できれば、新刊を読む前に書きたいなぁ~と
思っております。

だって、現時点(消えた結婚契約書)までで考えた話だから!!


 


 

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