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ゆめがたり
『身代わり伯爵』シリーズの二次創作(リヒャルト×ミレーユ)を徒然なるままに、まったりと書いております。
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 「……」

すっぽりとリヒャルトの胸の中に抱き寄せられ、刹那、全身に熱が拡がり、所作も思考も固まった。心臓が、張り裂けそうなほどドクドクと脈打って、息が詰まる。

「ミレーユ?」

リヒャルトの声がすごく近くに聞こえて、ビクッと身を震わせた。

「そんなに、怖がらないでください」

優しい
声リヒャルトの声が、どこか悲しげに聞こえて。
ミレーユは、慌てて首を振った。

「…こ、わが…、な…て…」

怖がってなんていない、と言うつもりなのに、言葉が、声が上手く出てこない。
そんな自分に、苛立ちをおぼえて、リヒャルトの胸に置いたままの手をギュッと握りしめる。

「すみません、強引過ぎましたね」

言いながら、ミレーユを抱く、リヒャルトの腕が離れ、脚が下ろされた。
いつでも、リヒャルトの膝の上から離れられる状態になって、

「ち、う……」

まだ震えてる自分の声に、苛立ち。涙が溢れてくる。

「ちがう、の……こ、怖がって、な…て、いな…わ」

「泣いているのに?」

リヒャルトの顔が切なげに歪む。その鳶色の瞳に浮かぶのは、後悔の色…?
そう思った瞬間、ミレーユは、自分からリヒャルトに抱きついた。

「違うって、言ってるでしょ!!」

ギュッと抱きしめて、叫んだ。

「ただ、驚いただけよ!!前から言ってるけど、リヒャルトの言葉とか行動とかって、すっごい、天然なの!!」

すっごい、を強調して、ミレーユは抱きしめる腕に、一層力を込めた。

「あなたには普通のことかもしれないけど、私はいつも死にそうになるの!!」

彼の一挙一動が、どんなに自分の心臓に負担をかけるかなんて、リヒャルトは考えたこともないのだろう。
こっちは、彼氏いない暦17年なのだ。
上級編まですでにマスターしているらしいリヒャルトにとっては、なんでもないことかもしれないけど。
初級編すら修めていない自分には、ハードルが高すぎるのだ。

「心臓は張り裂けそうなぐらいドクドクいって、全身の血が沸騰するみたいになって、苦しくなって、挙句のはてに、声も上手く出せなくなって……って、なに笑っているのよ!!」

ミレーユがどれほど大変であるかを必死に語っているにもかかわらず、見上げたリヒャルトの口元には笑みが浮かんでいて、鳶色の瞳も先ほどとは違って、穏やかな色を称えていた。
それに安堵しながらも、こっちの必死の訴えを笑われて、リヒャルトの背に回した手を解いて、そのまま彼の胸をわしづかむと、

「私が困っているのに、笑うってどうなのよ!!」と噛み付いた。

「すみません、嬉しくて、つい」

「うれしい…?意味がわからないわよ!」

あいかわらず、彼の言葉はわからない。

「男として、意識されているって、わかるから」

「え?リヒャルトはどう見ても男じゃない。あなたを見て女だって言う人がいるの?」

それは、その人の目がおかしいとしか思えないわ、と呟くミレーユの手を、リヒャルトはそっと握りしめ、その手を口もとにもっていく。

(ま、またッ!?)

ミレーユは、もう反射的といっても過言でないほど、ビクッと身を震わせた。

「だ、だからッ!!」

リヒャルトに触れられている場所から、熱が全身に拡がっていくような。そしてそれに呼応するように、心臓の動きが活発になっていく。

「リ、リヒャルト……」

「怖がらないで」

リヒャルトの声が、優しく響く。
じれったいほどゆっくりと、ミレーユの手に、リヒャルトの唇が落ちた。
触れるか触れないかの、まるで、そよ風のような、口付け。

「あなたが、好きなんです」

そう告げるリヒャルトの表情は、いつもの爽やかさな笑顔でなかった。それどころか、どこか切なげで、苦しそうだった。
リヒャルトのその表情に、動揺と緊張で早鐘を打っていたミレーユの心臓は、嘘みたいに止むと、今度は、逆に締め付けられるように、キュッと小さな音を立てた。

「―――なんで、そんな顔するの?」

「あなたが、好きで、好きで、どうしようもないからです」

リヒャルトの自分への気持ちは、彼にこんな苦しげな表情をさせるものだったのだろうか…
ミレーユは愕然とした。
彼を幸せにしたい。
彼が失くしてしまった『家族』になってあげたい。
彼が元気で、いつでも笑っていられるように。

(でも…)

こんな顔をさせてしまう自分は、ぜんぜんそれに叶っていないのではないか?と思えた。

「頑張ってはいるけど、やっぱり、結果が伴わない私には、無理なのね……」

「――ミレーユ?」

「努力だけじゃダメだってわかってはいるの。胸は大きくならないし、魅力だってつかないし、歴史も、経済も、覚えた端から忘れていって、何度も同じところから予習復習で。自分で自分の馬鹿さ加減に泣けてくるもの。だから、明日、あなたがどんな女性を選ぼうと、私、絶対仲良くなるわ。リディエンヌ様やマージョリー様や…!」

――アリス様のように、と続けようとしたミレーユの口が、刹那、リヒャルトの手で塞がれた。

(リヒャルト…?)

自分を見つめるリヒャルトの顔に、険しいものが宿る。

「俺は、あなたが好きなんですよ。他の女性を選ぶって、どういうことですか?というより、さっきも変なことを言っていましたね。明日は俺に近づかないってどういうことですか?」

いつにないリヒャルトの強い口調に、ミレーユは目を瞠った。
自分はなにかリヒャルトが怒るようなことを言ってしまったらしい、と思い当たる。
努力してもどうにもならない自分に、ほとほと愛想が尽きたのだろうか?
それとも、あんなに頑張るってといっておいて、未だ実にならない自分に、嫌気がさしたのだろうか。
どちらもあっている気がして、ミレーユは瞳を伏せた。
と同時に、涙があふれそうになって、慌てて彼の腕を振り払い、膝上から立ち上がると、そのままその場から逃げようとしたミレーユは踵を返した。が、それよりも早くリヒャルトの手がミレーユの手首を掴み、引き止める。

「は、離して……」

「無理です」

「…無理…って……ッ!」

いつもと違う強引な様子のリヒャルトに、ミレーユは戸惑い、目を見張る。
その一瞬に、リヒャルトの腕が伸びてきて、ミレーユを後ろから抱きしめた。

(なッ!!)

気持ち的
には飛び上がるほど、ミレーユは驚いて、息をのんだ。

「俺は、できるなら、ずっと、あなたといたいんです。片時も離れずに。あなただけを見ていたい」

そして、ミレーユの動揺を、一層煽るかのように、思ってもみないリヒャルトの言葉が続く。

「……そ、そんなこと、で、できる、はず、ないじゃない……」

考えることを放棄したまま、ミレーユは感情のまま答えた。

「ええ、そうですね」

「そ、そうでしょ!!だからッ…」

「だから、あなたと一緒にいられるときは、あなたといたいんです」

「わ、私だって、……いたいわ」

本当は、リヒャルトと一緒にいられる時間が、一番好きだった。
どんなに彼の天然な言動に、戸惑って、どっと疲れを感じても。
彼の行動に、心臓が壊れそうになって、死にそうになっても。
それでも、リヒャルトと一緒にいたい、と思っている。
ミレーユは、自分を抱きしめるリヒャルトの腕に、そっと自分の手を重ねた。
この腕に、自分は何度助けられただろう、と思うと切なくなった。

「ミレーユ……」

優しいリヒャルトの声に、一層切なくなって、ミレーユは重ねた手に僅かに力を込めた。
助けたいのに、助けられてばかりの自分。
頑張ってはいても、未だ何一つ結果が出せない自分。
それでは、ダメなのだ。
今の自分は、リヒャルトと一緒にいられない。

「でも、まだ、駄目なの」

「そんなこと…」

リヒャルトの言葉を遮るように、ミレーユは首を振った。

「ううん、今の私じゃ、あなたと一緒にいられないわ。なにもかも、足りなすぎるもの。私が一番嫌なことはね。あなたに迷惑をかけることなの。もう、あんな風に、あなたに迷惑をかけたくないのよ」

シアランでの一連の出来事は、まだ記憶に新しい。
彼を助けるつもりだったのに、助けられたのは自分の方で。
なにより、自分のせいで、彼を危険な目にあわせてしまった。
自分がいなければ、もっと効率的にオズワルドを倒せていたかもしれなかったのに。
ミレーユは、あの時ほど、自分の行動を恨んだことはない。

自分の浅はかさに、吐き気さえした。

「あなたを幸せにしたいのよ。あなたには幸せになって欲しいの」

彼が失ってしまったもの、それを取り戻す力は自分にはないけれど、これから彼が手にするなにもかもを、守りたいと思う。
もう、決して失わせないように。

「俺は、幸せですよ」

言いながら、リヒャルトの腕がミレーユから離れ、刹那、両肩を掴まれたかと思うと、くるりと半回転させられ、リヒャルトの胸の中に抱きしめられた。

「リ、リヒャ……ッ」

「あなたには言ってなかったかもしれませんが、俺は、あなた以外の妻を娶るつもりはありません」

「えっ?!」

「俺の愛は、すべてあなたに捧げます」

ミレーユの耳元に、ささやくように、そして誓うような、リヒャルトの声が響く。

「そ、…な、こと……無理…だ…わ……」

あなたは大公殿下なのだから、と言外にミレーユは呟いた。

「無理じゃありませんよ。というより、俺があなた以外の女性を欲しくないんです」

リヒャルトはそう告げると、僅かに抱きしめていた腕を解き、ミレーユの顎先を捉え、そっと、上向かせる。

「覚悟してくださいね」

いつもの、爽やかな笑顔なのに、その瞳はどこか真摯なもので。
ミレーユは、言葉をなくして、彼を見上げた。

「結婚したら、離してあげられないと思うので……」

そう言って苦笑とも取れる笑みを浮かべたリヒャルトは、その情熱的な言葉とは裏腹に、ミレーユの顎先に触れていた指をそっと離して、一歩下がった。

「ゆっくり休んでください。明日の夜、ともう今日ですね」

リヒャルトは12時を大幅に回った置時計をチラッと見て言うと、今またミレーユを見つめ。

「夜会には、誰がなんと言おうと、あなたの隣りには、俺が行きます」

だから、逃げなんでくださいね、とリヒャルトは鳶色の瞳を細めた。
その表情が、ひどく色っぽく見えて、ミレーユは思わず力強く頷いてしまった。

「わ、わかったわ…」

ドキドキとまた心臓が高鳴って、上手く呼吸ができない。
僅かに感じる眩暈は、睡魔の所為では決してないだろう。

「では、ちゃんと休んでください。他の男に寝顔など見られたら、嫉妬でその男を殺してしまうかもしれませんからね」

最後にそう言って部屋を出て行くリヒャルトに、ミレーユは反射的に「おやすみなさい」と告げる。
そして、自室の扉が完全に閉められた瞬間、リヒャルトの言葉の意味に思い当たり、ボォッと全身を真っ赤に染めた。

「そ、そういう、意味、だったのね……」

思いっきり見当違いのことを言ってしまっていた自分に、一層恥かしさが増して、顔が熱る。



その夜。

リヒャルトは宣言通り、父と一緒に会場に訪れたミレーユに手を差し出し、そのままエスコートをしながら、会場の中央へ進むと、夜会の挨拶とともに、ミレーユを「婚約者」であることを紹介した。
もちろん正式な婚約は喪が明けてからであることを含めたけれど。

ミレーユが溢れる涙を止めることができず、一度会場を辞したのを、笑う声はなく、どころか、彼女の涙に胸を打たれた者達がいたことを、リヒャルトは気づかなかった。

ただ一人、フレッドを除いて。

「あ~あ、敵を増やしてどうするのさ」

と肩を竦めた。


Fin


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終わりました~ 最後までお読みいただいた方(いるのか?!)ありがとうございました。

長かった・・・っていうか、ほんとうはショートストーリーを書くつもりだったのに。
どこをどう間違えたのか、こんなに長くなってしまいました(苦笑)

ああ、エドゥアルトとの約束がなければ、このままキスシーンぐらい書けたのに!!
とラブラブを目指している私としては、ちょっと物足りなさが・・・(←をいッ!!)

ともあれ、これではじめてのお話は書き終わったので、次を書きます。

現在ストックしてるお話が3つあるので、できれば、新刊を読む前に書きたいなぁ~と
思っております。

だって、現時点(消えた結婚契約書)までで考えた話だから!!


 


 

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