忍者ブログ
ゆめがたり
『身代わり伯爵』シリーズの二次創作(リヒャルト×ミレーユ)を徒然なるままに、まったりと書いております。
 1 |  2 |
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


「やっぱり、マージョリー様やアリス様のような関係がいいわよね。リヒャルトを皆で…」

 

「俺が、なんです?」
 

「ひゃッ!!」
 

ビクッと身を竦め、視界に入っていた人の影がリヒャルトだと確認して、やっと、ミレーユは身体の硬直を解くと。
 

「リ、ヒャルト!もう…驚かさないでよ……そのまま息が止まっちゃうかと思ったわよ」
 

「何度か扉を叩いて、声をかけたんですが、返事がなかったので、心配になって……それより、こんな時間まで起きているなんて、どうしたんですか?」
 

「えっ?」
 

ミレーユはリヒャルトの言葉が、僅かに首を傾げながら、テーブルの上の置時計に目をやった。
確かに、もう12時を回っている。
 

「あれ、もうこんな時間って、も、もしかして、うるさかった?」
 

悶々と考えているうちに、リヒャルトの部屋まで届くほどの音でも立てていたのだろうか、とミレーユは眉を曇らせた。
 

「そうじゃありませんよ。いつもなら寝ている時間なのに、明かりがついていたから、ロジオンが心配になって、俺を呼びにきたんですよ」
 

「えッ!そうなの。ご、ごめんなさい!」
 

ミレーユは慌てて頭を下げ、謝った。
リヒャルトのために、と色々考えていたのに、これでは本末転倒、どころか、マイナスもマイナス、失態もいいところだ。
ミレーユは小さく息を吐いて、項垂れる。
 

「疲れてるのに、起こしちゃって……本当に、ごめんなさい」
 

「そんなことより、どうしたんですか?」
 

「え、それは、色々考えていたら、時間を忘れて……」

「なにを考えていたんです?」
 

リヒャルトの顔が、さっきよりも近くなったような気がして、反射的に後退る。
 

「あなたが考えごとをするときは、危険なんですよ」
 

そう言いながら、リヒャルトの手が伸びてきて、そっと、ミレーユの手を掴む。
そして、優しく、包まれて。
ミレーユはビクッと身を竦ませた。
 

「あ、あの、ほんと、なんでもないのよ。だ、だから…」
 

リヒャルトの大きくて、温かい手の感触に、心臓が、うるさいほど踊って、熱が上がってくる。
それが一層恥かしくて、ミレーユは一歩下がって、リヒャルトの手の中から、自分の手を引き抜こうと試みる。が、瞬間、離さないというように、リヒャルトの手に力が入る。
 

「あ、あなたは、もう部屋に帰って。ほら、明日は大切な夜会でしょ。国中の貴族が集まるって聞いたわ。大公殿下が寝不足じゃ、困るでしょ」
 

「そうですね。たしかに寝不足は困りますね」
 

「そうでしょ」
 

「明日は、皆さんにあなたを紹介してまわらなければいけないですし。うっかり、あなたの寝顔など見られた日には、後悔しても仕切れない」
 

「え、明日は、リヒャルトに近づかないけど」
 

「……それは、どういうことですか」
 

「ルドヴィックが、あなたには明日、会場に来た令嬢の皆さんの相手をしなきゃいけないからって。私が近づいちゃったら、他の令嬢に失礼だって。皆さんとダンスをしなきゃいけないんでしょ。大公って体力勝負なのね。って、そうよ、ダンスをしなきゃいけないのよ!!早く寝なきゃ」
 

ミレーユは今また自分の失態に気づき、強引にリヒャルトの手から自分の手を引っこ抜くと、彼の背に回り、その背を押した。
 

「早く休まなきゃ、最後までもたないわよ!!ダンスって、あきらかに、男性の方が体力使いそうだし」
 

そう言いながら、ミレーユはぐいぐいとリヒャルトの背を押す。
 

「ちょ、ミレーユ、待ってください」
 

「ダメよ。少しでも早く休まないと。私もすぐ寝るから。居眠りなんかして、あなたに迷惑をかけないから安心して」
 

「違います!」
 

いつにない、リヒャルトの強い声に、ミレーユは驚いて、リヒャルトの背を押していた手を離す。同時に、リヒャルトはミレーユに向き直って、彼女の両肩に手を置いた。
 

「待って、俺の話も聞いてください」
 

「わ、わかったわ」
 

頷いて、そう返事をするミレーユに、リヒャルトは、では、座って話しましょう、と微笑んで、ソファへと促した。
ゆったりとしたソファにリヒャルトが腰掛ける。ミレーユもその隣りに腰を下ろそうとして、刹那、リヒャルトの腕が延びきて、抵抗する間もなく、引かれるまま、彼の膝の上に、腰掛けることとなる。
 

「リ、ヒャルト!」
 

突然のことに、ミレーユはうろたえ、悲鳴にも近い声で彼の名を呼んだ。
 

「は、話をするんでしょ。これじゃ、話なんて」
 

「できますよ。ほら、こうやって」
 

言いながら、リヒャルトの腕がミレーユの脚を持ち上げ、抱き上げるような格好になる。自然、リヒャルトの胸と顔が近づいて。
 

「やっ!って…待っ、って…」
 

静止する言葉も絶え絶えに、ミレーユは、リヒャルトの胸に手をついて、離れようと試みた、がビクともしないところか、腰に添えられていたはずのリヒャルトの腕が、肩を抱き、そのままその胸に抱き寄せられた。

To be continued

------------------------------

長くなってしまったので、今日はここまでにします(苦笑)

当初はもっと短い話だったのに、鈍感で、斜め上の思考の持ち主のミレーユなら、
とか思っていたら、長くなってしまいました。

それに、片思いだったころのリヒャルトだったら、苦笑しながら手を離したでしょうが、
今のリヒャルトは容赦ないから(笑)

たとえ、エドゥアルトとの約束があっても、そこはそれ、臨機応変(←都合のいい言葉だな)
ということで。

本当は、膝に乗せたりすることもダメだったんだよな~と今更気づいた。

ま、いっか。(あはっ)

拍手[27回]

PR

 (つ、疲れた……)

ミレーユは自室に戻ると、そのまま深く沈むようにソファに腰を下ろした。
いつも有り余るほどの体力・気力を自負しているミレーユではあるが、たった一つ、こればかりはいかに自分の体力・気力をもってしても、どうにもならないと実感していた。

(本当に、どうして、ああも天然なのかしら……)

リヒャルトの天然さは今に始まったわけではないけれど、求婚をされてからというもの、箍が外れているというか、1、2本ネジが取れてしまったというか、とにかく、心臓に悪い、恥ずかしさで死んでしまいそうになるほどの甘い言葉が連発されるのだ。

(そういえば、初めて会ったときも…)

と、初めてリヒャルトにあったときのことを思い出して、それから思い出せる限りの彼の天然シーンを数え上げて、フッとあることに気づいた。

「ま、待ってよ……」

考えてみれば、リヒャルトの天然さは初めからだった。ということは、女性にはいつもあんな天然発言しているってことで…とミレーユは自分のその考えに、青くなった。
明日は夜会である。
それもこの前のような内々の夜会ではなく、国中の貴族という貴族が集まる大きな夜会である。もちろん、女性も山ほど集まる。
ミレーユには到底およばない、本物の令嬢が…
「モテないですよ」と苦笑混じりにリヒャルトは言ったことがあったけれど。
天然な彼が気づかないだけで、本当は女性にモテても気づかなかっただけでは?とミレーユは思い当たる。実際、彼を想っていた女性はいたのだし…と。
女性にモテない、と思っている彼が、あの天然さを爆発させたら、彼を好きになる女性の数はもっと多くなるのではないだろうか。
いや、絶対になる、とミレーユは確信した。
ミレーユのように男性の甘い言葉に耐性のない女性なら、リヒャルトの爽やかな微笑みや優しい所作に陥落しないはずがない。


(もしかして、それが狙い?)


ふいにルドヴィックの言葉が脳裡を過ぎる。

『明日の夜会では、殿下にむやみやたらと近づかないでくださいね』

それは命令なんて生易しいものでなく、厳命だった。

『明日は国中の貴族が集まります。正式に婚約されたわけでもない貴女が、我が物顔で殿下の近くにいていいはずがないでしょう?』

言われたときは、泣きたくなるほど悲しく、それと同時に、それも仕方がないかも、とも思った。
いまだまともに踊れないダンスに、付け焼刃の宮廷作法に緊張しまくりな自分である。
リヒャルトを大公だと認めていない貴族もいる中、彼の足枷に自分がなってしまったら、それこそ、申し訳なさ過ぎて、彼の隣になどいられない。大公妃なんてもってのほかだ。
彼を助け、ともに歩むこと。それがなによりも大公妃の仕事だというのに、どちらも足りてないばかりか、足をひっぱるなんて、そんなことは絶えられないし、リヒャルトだって、さすがに愛想をつかすだろう。
そうならないためにも、ルドヴィックの言葉は間違っていない、と思えた。
もちろん、今もそれは間違っていないと思うけれど、ルドヴィックはことあることに「別の女性」をチラつかせる。
ミレーユより、ダンスが上手で、宮廷作法なんていまさら習う必要がなくて、胸があって、色気がある令嬢などそれこそ山ほどいるわけで。彼女たちがリヒャルトを好きになる可能性だって、当たり前だがあるわけで。それどころか、リヒャルトが彼女たちの誰かに惹かれることだって、ないわけじゃ……
と、そこまで考えて、ミレーユはぎゅっと胸の前で両手を握り締めた。

彼は、大公殿下なのだ。

今更なその立場に、ミレーユはいっそう強く両手を握る。

(な、なんで気づかなかったんだろう……)

考えてみれば、第二、第三の妃ができたとしても、なんら不思議なことじゃない。どころか、大公ともなれば、いて当然。少なくとも、リヒャルトの父も、祖父もいたのだし、思えば、あの父でさえ、政略結婚とはいえ、母とは別の女性と結婚したのだ。
ミレーユは自らが選んだ道とはいえ、ほんの少しだけリヒャルトとの結婚に戸惑いをおぼえた。
リヒャルトのことは、好きだ。
自分でも、こんなに彼のことを好きになるなんて思ってもいなかった。
そして、好きという感情だけで、ここまで必死になれる自分にも驚きだった。
だからこそ、わかってしまう。

(仕方がないのかもしれない……)

自分は、あまりに足りなすぎる。
頑張って、頑張って、少しでも彼の隣に、と思っているけれど。
勉強をするたびに、自分がどれほど教養のない人間であるか、実感するばかりで。
結局、何一つまともにできない自分がいる。
まして、自分は女性としての魅力があるわけではないから、益々落ち込む。

「胸だけでもあれば……」

ミレーユは凹凸の乏しい自分の胸を見下ろし、深い溜息を吐いた。
教養がなくても、女性として魅力な部分が少しでもあるなら、まだ救いがあるのに、とつくづく自分の貧相さに脱力する。

(ルドヴィックに好かれない理由も、わからなくない……)

努力をしている、だけじゃだめなのだ。
結果があって、はじめて、評価がされるのだから。

「第二妃かぁ~」

リディエンヌ様のように、自分は彼女達とも仲良くなれるだろうか。

「ううん、ならなきゃだめよね!!」

(リヒャルトが選ぶ女性達だもの、きっとなれるはずだわ)

と、いつの間にか、第二妃、第三妃がいることを前提に、自分のこれからに思いを馳せていた。
そのせいか、扉を叩く音にも気づかなければ、部屋に入ってきた人の気配にも気づかなかった。

To be continued

--------------------------------

一番最初に浮かんだのは、リヒャルトの天然(?)を他の女性に向けたら?
とミレーユが考えたとしたら、どう思うかな~?でした。

もっとも、リヒャルトは、ミレーユだけにしか天然(?)でないと思いますが。

彼は天然、というより、心底、ミレーユが好きで、仕方がないんだと思うんですよ!!




拍手[31回]

このたびは『ゆめがたり』においでくださいましてありがとうございます。

管理人、というか、駄文の作者micotoと申します。

当サイトは、うっかり身代わり伯爵を読んでしまったために、萌えに萌えて作ってしまった、
言ってみれば、自分の捌け口(←をい!!)のためのサイトです。
まさしく、『ゆめがたり』・・・かなりハート色が濃いと思われますが・・・

ちなみに傾向は、リヒャルトとミレーユのラブラブストーリーです。
というか、もうそれしかありません(笑)

ジャック同様、塩を用意してお読みいただければ、ちょうどいいのではないかと思われます(爆!)

こんな自分勝手なサイトではございますが、よろしければ、チラッとのぞいて見てください。



最後となりますが、本サイトは、原作者さま、出版社さまとは一切関係ありません。






 

拍手[4回]

Copyright(c)  ゆめがたり  All Rights Reserved.
*Material by Pearl Box  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]
Admin ★ Write ★ Res
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
バーコード
ブログ内検索
カウンター