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ゆめがたり
『身代わり伯爵』シリーズの二次創作(リヒャルト×ミレーユ)を徒然なるままに、まったりと書いております。
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 (つ、疲れた……)

ミレーユは自室に戻ると、そのまま深く沈むようにソファに腰を下ろした。
いつも有り余るほどの体力・気力を自負しているミレーユではあるが、たった一つ、こればかりはいかに自分の体力・気力をもってしても、どうにもならないと実感していた。

(本当に、どうして、ああも天然なのかしら……)

リヒャルトの天然さは今に始まったわけではないけれど、求婚をされてからというもの、箍が外れているというか、1、2本ネジが取れてしまったというか、とにかく、心臓に悪い、恥ずかしさで死んでしまいそうになるほどの甘い言葉が連発されるのだ。

(そういえば、初めて会ったときも…)

と、初めてリヒャルトにあったときのことを思い出して、それから思い出せる限りの彼の天然シーンを数え上げて、フッとあることに気づいた。

「ま、待ってよ……」

考えてみれば、リヒャルトの天然さは初めからだった。ということは、女性にはいつもあんな天然発言しているってことで…とミレーユは自分のその考えに、青くなった。
明日は夜会である。
それもこの前のような内々の夜会ではなく、国中の貴族という貴族が集まる大きな夜会である。もちろん、女性も山ほど集まる。
ミレーユには到底およばない、本物の令嬢が…
「モテないですよ」と苦笑混じりにリヒャルトは言ったことがあったけれど。
天然な彼が気づかないだけで、本当は女性にモテても気づかなかっただけでは?とミレーユは思い当たる。実際、彼を想っていた女性はいたのだし…と。
女性にモテない、と思っている彼が、あの天然さを爆発させたら、彼を好きになる女性の数はもっと多くなるのではないだろうか。
いや、絶対になる、とミレーユは確信した。
ミレーユのように男性の甘い言葉に耐性のない女性なら、リヒャルトの爽やかな微笑みや優しい所作に陥落しないはずがない。


(もしかして、それが狙い?)


ふいにルドヴィックの言葉が脳裡を過ぎる。

『明日の夜会では、殿下にむやみやたらと近づかないでくださいね』

それは命令なんて生易しいものでなく、厳命だった。

『明日は国中の貴族が集まります。正式に婚約されたわけでもない貴女が、我が物顔で殿下の近くにいていいはずがないでしょう?』

言われたときは、泣きたくなるほど悲しく、それと同時に、それも仕方がないかも、とも思った。
いまだまともに踊れないダンスに、付け焼刃の宮廷作法に緊張しまくりな自分である。
リヒャルトを大公だと認めていない貴族もいる中、彼の足枷に自分がなってしまったら、それこそ、申し訳なさ過ぎて、彼の隣になどいられない。大公妃なんてもってのほかだ。
彼を助け、ともに歩むこと。それがなによりも大公妃の仕事だというのに、どちらも足りてないばかりか、足をひっぱるなんて、そんなことは絶えられないし、リヒャルトだって、さすがに愛想をつかすだろう。
そうならないためにも、ルドヴィックの言葉は間違っていない、と思えた。
もちろん、今もそれは間違っていないと思うけれど、ルドヴィックはことあることに「別の女性」をチラつかせる。
ミレーユより、ダンスが上手で、宮廷作法なんていまさら習う必要がなくて、胸があって、色気がある令嬢などそれこそ山ほどいるわけで。彼女たちがリヒャルトを好きになる可能性だって、当たり前だがあるわけで。それどころか、リヒャルトが彼女たちの誰かに惹かれることだって、ないわけじゃ……
と、そこまで考えて、ミレーユはぎゅっと胸の前で両手を握り締めた。

彼は、大公殿下なのだ。

今更なその立場に、ミレーユはいっそう強く両手を握る。

(な、なんで気づかなかったんだろう……)

考えてみれば、第二、第三の妃ができたとしても、なんら不思議なことじゃない。どころか、大公ともなれば、いて当然。少なくとも、リヒャルトの父も、祖父もいたのだし、思えば、あの父でさえ、政略結婚とはいえ、母とは別の女性と結婚したのだ。
ミレーユは自らが選んだ道とはいえ、ほんの少しだけリヒャルトとの結婚に戸惑いをおぼえた。
リヒャルトのことは、好きだ。
自分でも、こんなに彼のことを好きになるなんて思ってもいなかった。
そして、好きという感情だけで、ここまで必死になれる自分にも驚きだった。
だからこそ、わかってしまう。

(仕方がないのかもしれない……)

自分は、あまりに足りなすぎる。
頑張って、頑張って、少しでも彼の隣に、と思っているけれど。
勉強をするたびに、自分がどれほど教養のない人間であるか、実感するばかりで。
結局、何一つまともにできない自分がいる。
まして、自分は女性としての魅力があるわけではないから、益々落ち込む。

「胸だけでもあれば……」

ミレーユは凹凸の乏しい自分の胸を見下ろし、深い溜息を吐いた。
教養がなくても、女性として魅力な部分が少しでもあるなら、まだ救いがあるのに、とつくづく自分の貧相さに脱力する。

(ルドヴィックに好かれない理由も、わからなくない……)

努力をしている、だけじゃだめなのだ。
結果があって、はじめて、評価がされるのだから。

「第二妃かぁ~」

リディエンヌ様のように、自分は彼女達とも仲良くなれるだろうか。

「ううん、ならなきゃだめよね!!」

(リヒャルトが選ぶ女性達だもの、きっとなれるはずだわ)

と、いつの間にか、第二妃、第三妃がいることを前提に、自分のこれからに思いを馳せていた。
そのせいか、扉を叩く音にも気づかなければ、部屋に入ってきた人の気配にも気づかなかった。

To be continued

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一番最初に浮かんだのは、リヒャルトの天然(?)を他の女性に向けたら?
とミレーユが考えたとしたら、どう思うかな~?でした。

もっとも、リヒャルトは、ミレーユだけにしか天然(?)でないと思いますが。

彼は天然、というより、心底、ミレーユが好きで、仕方がないんだと思うんですよ!!




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